選手達の頑張りと高野連の怠慢

 昨日の夏の甲子園決勝、駒大苫小牧早稲田実業は球史に残る名勝負だったと思います。両エースとも連投に継ぐ連投にも関わらず、球数を減らすべく冷静なピッチングをした斉藤君。早実に押されつつも要所を締めて耐えに耐え、最後まで投げぬいた田中君。延長15回まで投げぬく二人をみていて、もうこれは両校優勝にしてあげたいと思いました。

 とてもとても見事な試合でした。選手達を称えてあげたくて仕方のない試合でした。だからこそ、再試合が翌日の1時からという決定に怒りがこみ上げたのです。高野連イカレテイル。この炎天下で、15回を投げぬいた二人をまた連投させる?ありえない決定です。こんなことになるとは想定していなかったのでしょうが、今日の試合を抜きにしたって酷いシステムだと思います。

 勝ち上がれば勝ち上がるほどきつくなる日程。連投による酷使で、並みのピッチャーは相手チームを抑えられなくなり脱落していく。結果、良いピッチャーほど酷使され、日本一のピッチャーが最も潰される。日本野球界の宝になるであろう選手を潰していく大会運営ってあってはいけないことだと思うのです。

 今日も昨日も駒大苫小牧の先発は菊池君でした。これは田中君の負担を少しでも軽くするための采配だと思います。結果として短いイニングしか支え切れず、試合の大半を田中君が投げぬくことになりました。最初から田中君が投げていれば、最初の1点がなく、勝てていたかもという批判も周囲で聞かれました。ですがそれはやはり結果論です。

 駒大苫小牧は田中君以外が先発し、支えきれなくなったら田中君がリリーフするという戦い方をしてきました。田中君が全部投げた方が勝率は高いでしょう。事実、序盤にリードされる展開がほとんどでした。それでも田中君1人を投げさせ続けるという選択はせず、チーム全体で点を取って逆転するのが駒大苫小牧の野球。田中君を潰さない野球だったと思います。香田監督はそれを決勝でも貫いただけです。それはとても素晴らしいことだと思っています。だからこそ私は香田監督は名監督だと思うのです。

 ですが、高校野球の監督は勝利を求められ続けます。出来ることなら優秀なピッチャーを使いたいのは当然です。選手も投げたいかと聞かれれば投げたいと答えるでしょう。ブルペンからマウンドに向かう田中君の獲物を狙う肉食獣のようなダッシュをみても、投げたくて仕方ないであろうことが感じられます。監督も投げさせたい、選手も投げたいとするならば、誰が選手を守るんでしょう?高野連が何とかするしかないのではないでしょうか?

 日程をなんとかするのが一番でしょう。しかし一般人には分からない色々な理由があって日程をどうしても動かせないのかもしれません。それでも球数制限をするとか、連投制限をするとかという措置が取れるのではないでしょうか?そういう措置をすると選手層の厚いチームが有利になるという批判が出るかもしれませんが、それは選手の体よりも大事なことなのでしょうか?高野連の幹部に問いただしたい気持ちでいっぱいです。

 最後に私は道産子ですので、当然駒大苫小牧を応援していました。ですが、敵ながら早実のエース斉藤君は実に天晴れだと思います。日本野球界を支えてくれる才能の持ち主でしょう。最初は「汗をハンカチで拭いてるー。おぼっちゃんだーとかというふざけた視点で眺めていましたが、今回の見事なピッチングでそんな気持ちは吹っ飛びました。今回の酷使で素人目では特にダメージを受けているようには見えなかったんですが、この高野連の怠慢のお陰で、彼の選手生命が短くなってしまうようなことがあったら高野連の罪を許せません。田中君とプロにいってもライバルとして頑張って、W杯で同じチームで投げたりする光景が見れるといいなと思います。

追記の追記 

 私の文章よりも格段に説得力のある文章を発見したのでリンクしておきます。

 早実の斎藤はなぜ4連投しなければならないのか。: 見物人の論理

追記の追記2

 2006-08-21

 これです、これですよ。私もその通りだと思います。