「国家の品格」を読んで
今更ながら「国家の品格」を読んでみました。論理より情緒、武士道精神、祖国愛。ズタボロに書いている書評も結構ありましたし、ナショナリストが喜びそうな言葉の並ぶこの本は、考え方が中央やや左寄りの私としては食わず嫌いの対象でした。でもまああれだけ売れた本ですし、新書で薄っぺらいのでそろそろ読んでみたわけです。そしたら予想していたよりとんでも本では無かったです。
論理を否定しているわけではなくて、「論理だけ」を否定していましたし、それはその通りだと思います。論理には出発点が必要で、その出発点が間違っていると結論も間違う。これも同意。ただその出発点を決めるのは情緒、というのには若干違和感もあります。出発点を決めるのにも論理は必要じゃないかなーと思います。でも、論理以外の何かが必要というのには同意です。
愛国心についても書いていました。祖国愛とナショナリズムは別物というのは司馬さんも書いてました。国益主義のナショナリズムではなく祖国愛をという考えを主張されていました。愛国心を利用しようとする輩には格好の獲物なんじゃないかとやはり少し不安です。祖国愛は強制されるものではないし、誰もが自然に持っているものだと思うので、ことさらそれを高めようとするのにはやはり少し違和感があります。
あと、最も重要なことは論理では説明できないというのもその通りだと思います。「なぜ人を殺してはいけないか」は論理で説明するものではなく駄目なものは駄目なものというのもご尤も。
などなど色々と面白い点もありましたが、とはいえだから情緒、武士道が必要という点は強引でした。でも、日本には素晴らしい文化や精神があるというのは私もそう思いますし、「論理以外の何か」が必要なのはそのとおりだと思います。トータルの感想としては、売れているほど素晴らしくはないけれど、トンでも本と酷評されるほど酷い内容でもないといったところでしょうか。