「Winny裁判」開発した罪を問われているわけではない。

 「Winny裁判」で有罪判決、自由なソフト開発はもうできない? − @IT
 404 Blog Not Found:ソフトウェアをリリースする罪

 上記の2つの記事を読んで、これは酷い判決だと最初は思いました。

 被告側の主張は、

 Winny自体は、著作権上問題のあるファイルも無いファイルも取り扱える。著作権上問題のある行為が発生してもそれは利用者の問題である。結果的にその生産物を使った犯罪が発生したからといって、生産者の罪を問うのはおかしい。開発中にソフトウェアの開発者がその使用方法を全て想定することは難しいので、リスクを負わせることによってソフトウェア開発が停滞する恐れがある。
というところでしょうか。筋が通っていて納得できる主張だと思いました。この件で良く出てくる例に「ナイフのたとえ話」があります。ナイフを使った犯罪が起ったからといってナイフ生産者を罰するという話にはならない。たしかにその通りです。この判決は酷い。Winnyの流行とその影響による情報流出事件の多発を防止するための国策判決なのではないか、そのような判決は許されないと思いました。
ですが、この記事を読んで実はそういう論点で語る問題ではないのではないかと気付かされました。

大詰めWinny公判が突きつけたソフトウェアの明日 - CNET Japan
Winny裁判、罰金刑は重いか?軽いか?--自己矛盾を抱えた判決 - CNET Japan

 「この時は、彼を被疑者にしようという考えはわれわれには毛頭なかった。プログラム開発者と被疑者はまったく別で、プログラマーは悪くない、使った者が悪いと(私は)思っていた」
 ところがこの捜査官によれば、金子被告は家宅捜索後の事情聴取で、府警側が想定していなかったようなことを言い始めたという。
 「著作権を侵害する行為を蔓延させて、著作権を変えるのが目的だったんです」

2ちゃんねるの違法ファイル交換が蔓延している場所で製作を発表し、著作権への挑戦を書き込み続けてもいました。こうなってくると話は全然違ってきます。
1.著作権侵害を蔓延させる。(違法な手段)
2.著作権を変える。(現行法への挑戦が目的)
 先ほどのナイフの例でいうと、社会の変革を目指すために、争いあっている人たちの前にこっちの方がダメージをきちんと与えられますよとナイフを傍に置く行為ではないでしょうか?これは立派な殺人幇助です。
 この判決でも

氷室裁判長は、「Winnyはさまざまな分野に応用可能で有意義なものであり、技術自体は価値中立的なものである」とも述べ、Winnyの存在意義について理解を示している。

とあります。この判決の論点は、ファイル交換ソフトの製作の違法性を問うているわけではなく、現行法にたいして違法な挑戦をしたことが問題なのではないでしょうか?実際この被告が取り調べに際して「著作権を変えることが目的」などと正直過ぎることを言わなければここまでの問題にはならなかったと思います。
・結果的に違法行為に使われる      →セーフ
・意思を持って違法行為の為に提供する →アウト
だとするならば極めて妥当な判決だと思います。被告の正直な発言と現行法への違法な手段での挑戦に対する判決だとするならば、ソフトウェア開発が萎縮してしまうという主張や危惧はいささか的外れな反論ではないでしょうか。