口語訳古事記[神代篇]

 正月は実家で過ごしていました。正月特番はあまり好きではないので積本の一つ、「口語訳古事記」を消化しました。

 まだ古事記の前半部分である神代篇しか読んでいませんが、老人の語り部が語り継がれてきた神話を語るという形式なのでとても読みやすいです。注釈も多いですが、逆にその注釈が面白いとも思えるので苦になりません。
 
 もともと各種神話には興味があり、古事記物もそれなりに読んできましたが、断片断片で理解していたものがこの本のおかげで一つの流れとして把握できました。

 古事記には天皇家の正当性を語る性格があること。各地方勢力を統合していく中でそれぞれの神を取り込み、天皇家の神を中心とする神々の序列化が成されたこと。出雲系の神々を多く語ることで天皇家の出雲系への配慮がみられること。

 などなどを見ていくと、出雲には大国主が象徴する大勢力があったのだろうとか、大和には大物主が象徴する勢力があり、ある時期から出雲系とかかわりを深めたのかもしれないとか、神武東征の記述があるということは、天皇家は九州の勢力で東征して出雲大和系の勢力を征服して、大和に本拠を移すという歴史があったのかもしれないなどなどの妄想がどんどん膨らみます。こういう想像力が刺激されるのが古代史ロマンのよいところかなと思います。

 難点を言えば、神々の名前がすべてカタカナなので、漢字によって意味を想像できないのがきついといえばきついのですが、注釈によって、たとえばイカヅチならば

イカ(威力のある)+ツ(格助詞)+チ(霊力のあるものという接尾語)

オホゲツヒメ(スサノオに殺されてしまう大地母神的な女神)ならば

オホ(偉大なる)+ケ(食べ物)+ツ(の)+ヒメ(女神)

という風に説明が載っているので、各神の名前の表す意味がより理解しやすくなっています。

 古事記世界の断片的に知っているお話を一つの物語として統合するために読むもよし、古代に思いをはせるもよしという中々に面白い本です。お勧めです。人代篇も楽しみです。